AIの遺電子
これは、私たちの未来の物語--。21世紀に始まったAIの圧倒的な進歩は、社会の発展に寄与する一方、高い知性を持つ機械を道具として使う是非を、人類に突きつけた。そして22世紀後半。人々は「産業AI」とは別格の存在として、人権を持った「ヒューマノイド」を当たり前に受け入れ、共に暮らしている。須堂光は、ヒューマノイドを治す新医科の医者として…。
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AIの遺電子 第01話
第1話 バックアップ/時は未来。日本の人口の1割を占める「ヒューマノイド」を専門に診る医師・須堂光のもとに、ある男から「裏」の診察依頼が届く。自分の人格を違法にバックアップした妻が、体の不調に悩まされていたのだ。相棒の看護師・樋口リサの困惑をよそに、須堂は闇医者・モッガディートとして依頼主のもとへと駆けつける。
AIの遺電子 第02話
第2話 成長限界/陸上部で短距離走に励むヒューマノイドのジュンは、記録が伸びずに悩んでいた。ボディの「仕様」が決まっていて成長に限界があるのだと語るジュンを、須堂はやさしく励ますが、彼の気は晴れない。そんな折、須堂のもとに学生時代の旧友・カオルが訪ねてくる。世界の「仕様」をアップデートするため、超高度AI「MICHI(ミチ)」の…。
AIの遺電子 第03話
第3話 心の在処/壊れたクマのぬいぐるみ型ロボット・ポッポを修理した須堂。持ち主の少年は大喜びだが、母親はポッポに強く感情移入する息子を心配していた。時を同じくして、ある女性が恋人ロボットのジョーに別れ話を切り出していた。人間の恋人ができて、ジョーとの生活を続けられなくなったのだ。人の心を癒すために作られたポッポとジョー。2体のロボットの運命が…。
AIの遺電子 第04話
第4話 4つのケース/好きな女の子の姿をAIに学習させ、恋愛VRゲームのキャラクターとして召喚……そんな裏技に手を出してしまった高校生の野崎は、須堂に「リアルとバーチャルの区別」の大切さを諭されるも、ゲームの虜となってしまう。するとある日、「本物」の好きな子から意外な提案が…。愛と煩悩の狭間で繰り広げられる、喜怒哀楽のショウケース。
AIの遺電子 第05話
第5話 調律/ヒューマノイドは人間とは異なり、電脳を書き換えることで様々な精神治療ができる。生きづらさを抱える患者に、そうした「調律」はどこまで許されるのだろう。睡眠に悩むワケありの男と、学校に馴染めずピアノを弾いてばかりの子供。2人の患者が須堂の心を揺さぶる。
AIの遺電子 第06話
第6話 ロボット/今やAIは、驚くべき学習速度で人間をあっという間に追い抜くことが珍しくない。伝統工芸の技を記録するため、山の鍛冶屋に弟子入りしたロボット・覚える君と、人とのコミュニケーションを学ぶために小学校に入学したロボット・パーマ君。彼らの目覚ましい成長が、人の心にもたらすものとは。
AIの遺電子 第07話
第7話 人間/電脳に障害を負った老人の感情が、音楽に触れると戻ってくる--。そんな美談に裏の事情を嗅ぎ取った人権団体の男が、須堂新医院の門を叩いた。「人間の謝罪」にこだわるモンスタークレーマーに気を病んだヒューマノイドもまた、須堂に診察を求める。信念の交錯が生み出す、患者たちの意外な結末とは。
AIの遺電子 第08話
第8話 告白/バレンタインデーに愛情を伝える風習は未来も健在だが、人間の不器用さや鈍感さもまた健在だ。すれ違うこともあるけれど、勇気を出して踏み出せば、物語は動き出す。リサ、須堂、サバちゃんの3人も、例外ではなく……。
AIの遺電子 第09話
第9話 正しい社会/テクノロジーへの称賛と嫌悪は、いつの時代もセットでやって来る。AIを駆使して「不健全」なアニメを作る人気クリエイターは、果たして「悪」なのか?AIを拒否して人の指導による公平を目指した小学校は、果たして「善」なのか?多様性が綱を引く、倫理観の攻防が始まる。
AIの遺電子 第10話
第10話 来るべき世界/「MICHI」を始めとする超高度AIによって人間社会が維持管理されることに、いつしか人類は疑問を抱かなくなった。しかし、AIのゆりかごに収まらない魂は密かにくすぶり、今も世界に戦いを挑む。時に信仰や、血を伴いながら。